郵便では、私書箱のユーザは実際の住所をもっていなくても郵便を受けとることができます。 また私書箱はひとりのユーザが複数持つことも可能です。 これを電子メイルに起きかえてみると、つまり電子メイルでは ユーザはインターネットに直接接続されていなくてもメイルを受けとることができ、 しかも一人のユーザが複数のメイルボックスを持つことも可能になるわけです。
電子メイルを受けとるにはメイルサーバさえ動いていればよく、 ユーザが自分のクライアントマシンを四六時中インターネットに 接続している必要はありません。ユーザは必要な時に (インターネットに限らず) 何らかの方法でメイルサーバにアクセスできれば、あとは 自分のマシンさえ持つ必要はないのです。 たとえば多くの携帯電話では、電子メイルの受け取りは インターネットを介さず、携帯電話の回線を使って、その電話会社が 所有しているメイルサーバに直接アクセスしています。 また一部の web メイルには後に紹介する POP という機能があり、 外部のメイルサーバからメイルを取り込むことができるものもあります。 このようなサービスはまさに電子メイルの利点を 活用したものであるといえるでしょう。
(電子メイルがこのような仕組みになったのには歴史的な経緯もあると思われます。 はじめて電子メイルシステムが設計された時代、インターネットに接続できる ホストコンピュータは非常に高価でした。そのためこれらのコンピュータは 複数の人間が共有して利用しており、一台のコンピュータが 何人分ものメイルボックスを一括して管理する必要があったのです。 ユーザが一人一台のコンピュータを持てるようになってからも、 この仕組みはそのまま残りました。いっぽう、最近になって開発された メッセンジャーなどのプロトコルでは、電子メイルとは違ってサーバを介さずに 2つのホスト間で直接メッセージをやりとりできるようになっています。)
また、メイルサーバを経由させることにはもうひとつのメリットもあります。 それは「配送システムの詳細をユーザの目から隠す」ということです。 ユーザは電子メイルの詳しい配送経路を知る必要はありません。 各ユーザは自分のクライアントマシン(自宅)とメイルサーバ(郵便局)間の 通信にだけ責任をもてばよく、いったんメイルサーバにメイルを投げてしまえば、 あとは自動的に相手のメイルサーバに転送されるのを待つだけでよいのです。
いっぽう、この方法にはデメリットも存在します。 まず先に述べたように、クライアントマシンがメイルを 直接受けとることはできません。受信したメイルはすべてメイルサーバに 「たまって」おり、ユーザはこれを毎回取りに行かなくてはなりません。 また通信のリアルタイム性も失われます。一般に電子メイルでは、送信時に 相手のメイルサーバの詳しい状況はわかりません。 もしかするとメイルサーバが稼働していないかもしれないし、 稼働していたとしても、宛先ユーザのメイルボックスが存在しないという 可能性もあり得ます。しかしこれはメイルが相手のメイルサーバに 着いてみるまでわからず、最初にメイルを送る 2. の時点でユーザがこの情報を 知るすべはありません (これは郵便でも同じことで、ある郵便局に特定の名前の 私書箱が存在するかどうかは、手紙がその郵便局に着くまでわかりません)。 また、いったんユーザがメイルサーバにメイルを 送ってしまうと、そのメイルはユーザの手を離れてしまい、 いったん出してしまったメイルを「キャンセルする」ことはできません。
また、当然ながらメイルサーバはつねにインターネットに接続されている必要があります。 いつメイルがくるかを予測することはできないため、メイルサーバは 24時間、 365日休みなく稼働しつづけなければなりません。メイルサーバが動いていない場合、 そのドメイン名宛のメイルは一切受けとれなくなります。 (実際には、重要なメイルサーバはふつう二重化されており、 ひとつがダウンした場合でももうひとつのメイルサーバでメイルを受けとることが できるようになっています。この詳しい方法については ... 節をごらんください。) 言いかえれば、メイルに対する信頼はメイルサーバにかかってくるのです。