1a. 電子メイルを使う・使わせるということ


インターネットに接続されているコンピュータ (ホスト) 上で 情報をやりとりするにはさまざまな手段があります。 なかでも電子メイルは手軽に利用でき、個人レベルで情報をやりとりできるため、 さかんに利用されています。最近では電子メイルで文章以外のデータを 送ることも多くなってきました。さらに現在では携帯電話や web メイルの普及により、 電子メイルが使われる環境も多様化しています (図 1a-1)。


図 1a-1. さまざまな電子メイルの利用形態

しかしその表面上の手軽さとは裏腹に、電子メイルの仕組みは複雑です。 電子メイルはいくつものホストを中継して配送され、 その間にさまざまな種類のソフトウエアやプロトコルが関わっています。 現在では電子メイルの配送に複数の組織がからむようになってきており、 そのため電子メイルに対する責任の所在もわかりにくくなっています。

電子メイル配送システムを運用するというのは、 ソフトウエアをインストールして終わり、 というような通りいっぺんの仕事では決してありません。 電子メイルは非常に複雑なシステムであり、 それを継続的に運用するのは骨の折れる仕事です。 システム管理者はユーザのニーズを把握し、 メイルサーバやユーザの個人用クライアントマシンをふくむ必要な機材を設定し、 メイル配送に関係する組織との連携をとり、 すべてがうまく作動するようたえず気を配らなくてはなりません。 事故があったときのために、責任の所在も明確にしておく 必要があります。情報インフラである電子メイルにとって、 配送が何日も遅れるような事態は致命的です。そのため管理者は 異常に対してすばやく対応できるような態勢をととのえておく必要があります。 電子メイルを利用する一般ユーザの啓蒙や教育も行わねばなりません。 ここではそういった「電子メイルシステムを運用・維持していくための 社会的な要因」については触れませんが、いずれにせよ 電子メイルシステムの全体像を把握しておくことは システムを運用・維持していくにあたって不可欠といえるでしょう。


Yusuke Shinyama
Last Modified: Tue May 6 23:25:52 EDT 2003 (05/07, 12:25 JST)