検索エンジンはウィキペディアにどの程度依存しているのか?

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目次.

1. 概要
2. 注意
3. 調査方法
4. 調査結果
5. 結論
6. 実際に使用した各キーワードの結果

Update (10/29) 本記事の 続編: ウィキペディアは検索エンジンにどの程度依存しているのか? を作成しました。

1. 概要

インターネットを日常的に使っている人で、Wikipedia (ウィキペディア) を 知らない人はいないでしょう。ウィキペディアの正確さについては 依然として多くの賛否両論がありますが、いまではこのサイトは 検索エンジンの結果でも上位に表れるようになっています。 最近ではウィキペディアを「ネットの代表的な意見」のように扱う人さえいます ^[要出典]。

さて、多くの人はネットで調べ物をするとき、検索エンジンを利用しますが、 検索エンジンがウィキペディアのページを検索結果の第1位として返す割合は どれくらいなのでしょうか。ここでは、不完全ではありますが、 一般に入手できる統計と簡単なプログラムを使ってこの割合を測定しようとしました。

2. 注意

今回の調査ではウィキペディアで閲覧回数の多い記事名を「代表的なキーワード」として使っていますが、 この方法には重大な欠陥があります。ここではウィキペディアで閲覧回数が少ないキーワード、 あるいはウィキペディア上に記事が存在しないキーワードについては、知るすべがありません。 それらは調査結果から抜け落ちています。実際には、ウィキペディア の記事はあまり見られなくても、 検索される回数は多いというキーワードが多く存在するはずです。たとえば、 以下の結果を見ると、芸能人やアニメなどの「世俗的な」キーワードが多く、 (政治家の名前など) 時事的なキーワードはほとんど表れていません。 わりあい頻繁に検索されるであろう会社名や商品名といったものも入っていません。 ただし、会社や商品の名前以外のキーワードについては、ここで挙げられている一覧は 実際に検索されるキーワードとわりと重なっているのではないか、と推測します。

また、ここで用いたキーワードが検索結果をウィキペディア寄りにしている可能性があります。 たとえば、今回は「日本の声優一覧」という記事の閲覧が多かったので、 これをキーワードとして使いましたが、実際にはこんな文字列はウィキペディア以外には あまり表われないでしょう。ただし、実際には検索エンジンはこのキーワードの一部、 たとえば「日本の声優」だけでもこのページを表示するかもしれず、 その場合はウィキペディアはここで測定したよりも広範囲なキーワードをカバーしている、 ということになります。

3. 調査方法

• 実施日時: 2008年10月13日夜 (日本時間)
• Wikipediaの統計ページから、閲覧回数の多い記事一覧を取得する。 今回使ったのは 2008年8月分の結果。
• 特別ページ、および記事名のカッコ部分 (「(漫画)」など) を除き、重複した記事名を削除する。
• これらの記事名をキーワードとして、それぞれの検索エンジンに入力し、検索結果を調べる。 各キーワードごとに上位10件のURLを取得し、1位がウィキペディアのページであるか否か、 あるいはウィキペディアのページが10位以内に表れているかどうかを調べる。
  (注意: ウィキペディアへの依存度を調べるのが目的であるので、返された URL が ほんとうに元のキーワードの記事、あるいはそのリダイレクト記事であるかどうかまでは確認していない。 URL がhttp://ja.wikipedia.orgで始まっていればそれはウィキペディアのページであると判断した。)
• 使用した検索エンジン (アルファベット順) : Baidu (日本語版)、 Google (日本語版)、 MSN Search (日本語版)、 Yahoo! JAPAN

4. 調査結果

各検索エンジンごとの結果 (より詳細な結果はこのページ下に記載):

5. 結論

• どの検索エンジンでも、調べたキーワードすべてで 10位以内にウィキペディアのページが入った。
• 今回比較した検索エンジンの中では、Googleが比較的 依存度が高く、Yahoo!の依存度は低かった。
  (Baidu と Googleでは、半数以上のキーワードでウィキペディアのページが 1位になった。)
• この結果が実際の検索エンジンの利用とどれくらい合致しているかはわからないが、 検索エンジンの結果の2〜3割程度がウィキペディアの記事を含むと仮定すると、 依存度はかなり高く、したがってウィキペディアの影響力は大きいと思われる。

ことわっておきますが、 ウィキペディアのページをよく返す／返さないからといって、必ずしも その検索エンジンが「いい」「わるい」というわけではありません。 ただし、どの検索エンジンにも「くせ」があります。検索エンジンのくせは、 “最適な検索結果”というものを各検索エンジンがどのように計算しているかによって違ってきます。 これらの計算方法は、各検索エンジンとも (人間によって) 毎日のように調整されており、 そこには各社のネットに対する考え方が反映されています。

ウィキペディアは善意の人々によって構築された“百科事典”であると標榜しています。 実際、ウィキペディアのほとんどのページは誰でも自由に書き換えられるようになっており、 このことが情報の信頼性を高めていると考える人もいます。しかし、 ネットが事実上、検索エンジンに支配されており、いまや検索エンジンでも 上位にくるようになったウィキペディアがそこに大きな影響を与えているとすれば、 私たちがネット上の情報から得る印象は、ときにこのような要素により 大きく左右されてしまう危険があります。ウィキペディアをネット上の 「代表意見」のように扱う風潮は、望むと望まざるとにかかわらず、 こうした影響力の集中を促進していることになります。

付録. 実際に使用した各キーワードの結果