Theo de Raadt インタビュー (2005年)

以下は A good morning with: Theo de Raadt の日本語訳です。 (C) 2005 TuxJournal


Q1. こんにちは Theo、貴重なお時間をいただきありがとうございます。 最初にあなた自身について話していただけますか? いまどんな調子ですか? 仕事は何で、余暇はどのように過ごしてらっしゃいます? 趣味は何ですか?

Theo: ぼくは OpenBSD のプロジェクトリーダーとして、フルタイムで働いている。 ぼくは何らかの目標をきめて、開発者間のコミュニケーションを活発にし、 基本システムのほとんどすべての側面に関わるよう努力している。 いくつか趣味はもっているが、ほとんどそれらはコンピュータから完全に距離をおくためのものだ。

Q2. あなたは現在もっとも有名で広く使われているセキュアなオペレーティングシステム OpenBSD と OpenSSH のグルであり、創始者だと知られているわけですが、なぜこれを作ったんですか? 何年も前にあなたが OpenBSD を始めたとき、OS の世界で必要だったものは何ですか? 何に触発されて OpenBSD と OpenSSH をスクラッチから書いたんでしょう?

Theo: ぼくは OpenBSD を始めたし、それより古い多くのプロジェクトも始めている。 その理由はベンタの提供するシステムは品質を考えてデザインされていないと感じたからだ。 ベンダの第一の目的は金を稼ぐことにある。産業によっては、高い品質はより多くの 売り上げと密接に関連しているが、コンピュータ産業がそうなっていないことは これまでにみんな知っている。

あとになって、ぼくはソフトウェアのセキュリティ問題のほとんどは 単に劣悪な品質のためだとわかるようになった。だから OpenBSD と OpenSSH、そしてその他のいかなるところでもぼくらは 高い品質のために仕事をしている。

Q3. なぜ人は OpenBSD に来るのでしょうか? そのメリットは? かれらが OpenBSD でできることと、できないことというのは何でしょう?

Theo: もう 10年近くも OpenBSD以外のオペレーティングシステムは使っていないので、 この質問は基本的に回答不可能だね。

Q4. OpenBSD のカーネル・アーキテクチャについて話してもらえますか?

Theo: ぼくたちのソースコードは完全にフリーであり、すべての人が 自分で学習できるよう公開されている。

Q5. もうすぐ OpenBSD 3.7 をリリースするとおっしゃっていましたが、 おもな特長は何になりますか?

Theo: http://www.openbsd.org/37.html に このリリースの新しい変更が記してある。

ぼくらは 6ヵ月ごとに新しいリリースを作成している。

新しく開発されたものはすごいと思う。だが、ぼくの意見では、 毎回の開発サイクルで少しずつ修正が続けられている細かなことに比べれば それほどすごくはない。

OpenBSD の開発はマイルストーンに追いたてられた改革の連続ようなものじゃない。 それは小さな発展のステップのつみかさねだ。よりクリーンになることをめざしつづけて、 小さく一歩ずつ一歩ずつね。

Q6. なにが OpenBSD を成功に導いたと思いますか?

Theo: 開発者たちの情熱と、彼らが開発のためにつぎこんだ豊富な経験だ。 そしてこれは驚くべき偶然だが、ユーザもまたぼくらと同じニーズをもっている。

Q7. OpenBSD を他のアーキテクチャに移植する際に問題はありますか?

Theo: 毎回新しいアーキテクチャに移植するたびに、移植は前よりも簡単になっている。 ぼくらが異なるアーキテクチャ間で共有している、マシンに依存しないコードは新しいアーキテクチャ用にも ほとんど変更する必要がない。いまの問題は新しいデバイスドライバだ。 それらはドキュメントがないということがよくある。

Q8. お気に入りのプログラミング言語は何ですか? またその理由は?

Theo: OpenBSD のほとんどは C で書かれている。

Q9. 一日に何時間ぐらいコードを書きますか?

Theo: Hackathon をやっているときは、一週間寝てるとき以外はコードを書きつづけている。 それ以外のときはもうちょっと余裕があるね。

Q10. OpenBSD 開発チームにおけるあなたの役割は何ですか?

Theo: ぼくは多くのことをしているが、もっとも重要な仕事はさまざまな開発者たちが つねに正しい人々と話せるようにすることだ。

Q11. セキュリティに関するあなたの見方を聞かせてください。

Theo: ほとんどすべてのセキュリティ上の問題は単に劣悪な品質によって生じるものだ。

Q12. OpenBSD がセキュリティを向上させるのに役に立ったと思いますか?

Theo: 疑う余地はない。それは何度も何度も証明されている。

Q13. OpenBSD はホームユーザ向け、あるいはデスクトップ向けのオペレーティングシステムになりますか?

Theo: もしそうならなかったら、Linux もならないだろう。

Q14. OpenSSH で見つかった、 いちばん新しい SSH-1 セキュリティ問題を怖いと思うことはありますか? あなたのパッケージのセキュリティを心配するとしたら、どんなことでしょう?

Theo: SSH-1 プロトコルに存在する実際の問題は理解している。それも技術的なレベルでね、 だから馬鹿みたいに怖い怖いと迎合することはない。だからこの CRC の問題についてはまったく心配していない。 これよりずっと心配なのは、まだ未知の問題があるんじゃないかってこと。 すでに知られてはいるが、つまらないやつで、exploit するのがかなり難しいような問題じゃなくてね。

Q15. 私たちがネットワークセキュリティを改善できるとしたら、それはどんなふうにですか?

Theo: 多くの人々は実際の問題を理解していないために、必要以上に解法をつくりすぎている。

Q16. あなたがたの仕事が NetBSD や FreeBSD に関連していることはありますか? これら 2つの OS でなにか仕事したことや、なにかを改良したということは?

Theo: ときどき彼らはぼくらの方から変更点を持っていく。 ときどきぼくらは彼らの方から変更点を持ってくる。 せいぜいそんなところだ。

Q17. GNU/Linux は好きですか? また、その理由は? ときどき使ったりします?

Theo: 一度も使ったことはない。

Q18. これでインタビューは終わりです。どうもありがとうございました!

Theo: どうも。

Last Modified: Mon Dec 12 01:01:42 EST 2005 (12/12, 15:01 JST)

Yusuke Shinyama